お正月や祝いごとなどの「ハレの日」に必ず登場する
縁起のよい食べ物「お餅」。日本人の暮らしにぴったりと寄り添って、
季節の移ろいや人生の節目を豊かに彩ってくれます。

2月15日 涅槃会(ねはんえ)
この日にお亡くなりになったお釈迦さまを偲んで営まれる法要、涅槃会。お寺では、お釈迦さまに花団子などを供え、お参リの人に配ったリします。この団子のことを「花草だんご」などと呼び、これをを食べると、無病息災で過ごせるといわれています。
3月3日 ひなまつり
女の子のすこやかな成長を祈って家族で祝うひなまつり。
この日は菱餅をひな段に飾りますが、菱餅の三色はそれぞれ、雪の大地(白)・木々の芽吹き(青)・生命(桃)を表しており、自然のエネルギーを授かり、清らかに育ってほしいとの意味が込められています。
桜餅
桜の季節を迎えると、食べたくなるのが桜餅。塩漬けにした桜の葉でくるんだお餅です。桜餅には関東風と関西風があり、関東風は、小麦粉を水にといて薄く焼いた皮で餡を包んだもの。関西風は、粗く挽いたもち米を蒸したもので餡を包んでいます。
春の彼岸、春分の日
春の彼岸に、神仏やご先祖にお供えするのがぼた餅です。うるち米と餅米を半つきにしたお餅を小豆餡で包み、丸くかたどった姿を、このころに美しく咲く牡丹の花に見立てて「ぼたん餅」と呼ばれたのが名前の由来です。きな粉や青のり、黒ごまなどをまぶしたものもあります。
5月5日 端午の節句
江戸時代のころから男子の節句として、身を守る「鎧」や「兜」を飾り、「こいのぼり」を立てて、男の子の成長や立身出世を願ってお祝いをするようになりました。柏の木は新しい芽がでるまで古い葉を落とさないことから「家督が途絶えない」縁起物として、米粉で作る餡入りの「柏餅」を食べます。

7月7日 七夕餅
地方(農村地帯)によっては祖先の霊を迎えるため、七夕に餅を供えます。また、最近はそうめんを食べるのが習慣になりましたが、その昔七夕に食べられていた「索餅」という食べ物が「そうめん」に変化したとも言われています。
土用餅
昔、宮中では、カガ芋の葉を煮出した汁で餅米の粉を練り、丸くまるめ味噌汁に入れ土用入りの日に食すると暑気あたりしないとされていました。それが江戸時代にあんころ餅に変わりました。お餅は力餅、小豆は厄除けに通じるため、土用餅を食べると、暑さに負けず無病息災で過ごせるといわれています。
8月15日 盂蘭盆会(うらぼんえ)
お盆はご先祖様が家に帰ってくる日。13日のお盆の入りにはあんこのついた「お迎え団子」、16日の送り盆には白い「送り団子」などをお供えする地域が多いようです。この他にも、白餅やおはぎ、白蒸し(餅米を蒸したもの)などをお供えする地域もあります。

月見団子
仲秋の美しい名月を愛でるお月見。萩やすすきと一緒に供える、米粉で作った団子を月見団子といいます。十五夜は芋名月、十三夜は栗名月や豆名月ともいわれ、芋や豆・栗を供える地域もあります。長細い団子にこし餡を帯状に巻いて"雲がかかった月"を表現する京風など、地域によって味も形もさまざまです。
秋の彼岸、秋分の日
春の彼岸のぼた餅と同様に、神仏やご先祖にお供えするものですが、同じお餅が秋には「おはぎ」と呼ばれます。
亥(い)の子餅 10月の亥の日 13日前後
平安時代、宮中の年中行事のひとつに「猪子祝(いのこいわい)」がありました。旧暦十月初亥の日の亥の刻にお餅を食べると万病を除くというもので、このお餅は「亥の子餅」と呼ばれました。猪子祝の風習はなくなりましたが、形や素材をさまざまにアレンジした亥の子餅が、今も和菓子店の店頭に並びます。

11月15日 七五三
三歳と七歳の女の子、五歳の男の子が晴れ着を着て、親子連れだって氏神(うじがみ)に参詣し、子どもの成長を感謝してご加護を祈ります。親せき、縁者からお祝餅が贈られる地域もあり、そのお祝い返しとして“千歳飴(ちとせあめ)”を配る風習もありました。
お正月
三種の神器のひとつ「鏡」から命名された鏡餅は、神仏にささげるものとも、神様と人間をつなぐものともいわれています。また、お雑煮に入れる小餅は鏡餅の分身ともいわれています。ともに、1年の初めに、家族の安全と円満、健康や学業の向上を願うものです。昔は正月の小餅を年魂(玉)として家族全員に配りました。これがお年玉のはじまりです。

入学、卒業、進学祝い
子どもの成長の節目となる、卒業、入学、進学などには、親せき、縁者から紅白の祝餅が贈られる地域が多いようです。
お宮参
大昔は生まれて100日前後に氏神に親子で参詣しましたが、現在は30日前後です。男子は赤い文字の大、女子は小とおでこに書きます。この日に親せきからはお祝いの餅が贈られます。 お宮で着物にお守りをつけてもらいます。
お誕生餅
満1歳のお誕生日をお祝いするお餅で、無事に成長したことをお祝いすると同時に、これからも健やかに育つことを祈ります。1升分の餅米で餅を作って「一升餅」と呼び、子供が力持ちになるよう、立派に成長するようにとの願いをこめて、その子に背負わせます。津には1歳の誕生日までに歩いた子に餅を背負わせる風習があります。
厄落とし(厄払い)
男は25、42、61歳、女は19、33、37歳が厄年とされています。その厄を払うために餅まきをする土地が今も残っています。節分や大晦日は厄日とされ、お寺などで餅まきを行うのも、厄払いのためというわけです。
棟上・新築祝い
新しい家を建てる時、家の骨格ができ上がり、完成近くになると、近所の方に祝い餅を配る地方が今もあります。地方によっては餅まきをします。

参考:全国餅工業協同組合「日本人とお餅の関係」